広光ブログ 『掉尾を飾る』 ~平成23年9月~

「これは太平洋戦争終結の1945年(昭和20年)に1年生として在学した、最後の旅順工科大学予科生の手になる記録文集である。」 1990年5月10日発行

20年前にこの本を読みました。
希望に胸膨らませて入学した学校を、たった数ヶ月で追われた彼らの思いが、たくさん詰まった記録集です。
満州や朝鮮、内地からも入学者が集まるこの学校の生徒達は、興亜寮という寮で生活しており、特にこの寮での思い出は多いようです。
興亜寮で行われる『歓迎ストーム』という恒例行事は、消灯後に2年制が新入生の部屋に乱入し、寝ている新入生に馬乗りになって頬をビンタして回るというものだそうです(*_*;
『ファイアストーム』もまた、不思議な行事です。燃え上がる炎を中心に二重の円陣を作り、『ダイナマイト節』を歌いながら、中と外の円陣は逆回りします。中の円と外の円が接触した際に、外側の円の生徒は中の円の生徒を思いっきり蹴飛ばし、蹴飛ばされた生徒は、後ろ向きのまま蹴り返します。 (@_@。
これらの行事は、上級生が指導し、生徒だけで行います。
行事の後には、爽快感があり、絆が深まり、この学校の生徒である誇りが増していくように感じられました。長い人生の内の、ほんの数ヶ月の学生生活が、その後の人生に大きな意味を持つ時間になるほどに、彼らの青春の思い出は光り輝いているように思えました。
当時17歳だった少年達は、現在83歳になっています。
「旅順工科大学校歌の冒頭に、“興亜の歴史に不朽の跡を”とあるが、われわれの予科1年生の束の間の歴史は、誰が証言してくれるだろう?敗戦によって終焉を余儀なくされた旅順工科大学の最後の学生となったわれわれを、その短い青春の歴史を検証するものは、われわれ自身を措いてない。文集刊行を思い立った所以は、一にこの点であった。」
これだけの誇りと、美しい思い出を持つ彼らの存在は、私たちが失くしてしまったものを思い出させてくれるのではないかと…。満州の地を踏みたいです。現在、旅順工科大学は軍事施設となっているので中には入れないそうですが、歴史を実感しに行きたいと思っています。